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依存四類型

Four categories

「依存四類型」とは?

2013年、アスリートの協力を得て、才能教育を受けてきたアスリートの競技引退期のこころの内面についてわかったものです。ここでは

  • 人生の中で危機を経験せず、親や指導者らの意思決定に依存的である(マーシャの「早期完了」)
  • エリクソンが言う「発達課題」に比べて、こころが未熟である

ことがわかってきました。

さらに

  • 「アスリートと親/指導者らとの情緒的関係性」
  • 「アスリート自身の感じていること」
  • 「スポーツの意味」

に注目して分析を進めたところ、4タイプ(純粋培養、支配、過干渉、構ってもらえない子)あることがわかってきました。

依存四類型(小川,2013)

依存四類型(小川,2013)

注)2013年版は閲覧不可です、2015年版はそれを要約して公開しています
  このウェブサイト掲載のために、カテゴリ「支配」の下位コードを一部訂正しています。

純粋培養(Cocooned)

純粋培養

純粋培養は「選手がスポーツという無菌室で培養されている」状態です。選手にとっての人生の重要な意思決定は親 / 疑似親が行うか、親 / 疑似親によって用意される限られた選択肢からなされます。選手は選択肢の吟味やそれに伴う葛藤、衝突をほとんど経験していないため、感受性が極端に乏しく、ネガティブな側面を内面の中で処理できずに身体化させる傾向が見られます。選手と親 / 疑似親は、スポーツの世界にいることを幸せだと認識しています。このカテゴリの選手は、幼児期以降の発達課題について、家族を含めた対人関係の中で葛藤を伴わずに積み残していると言えます。

(小川,2015)

純粋培養

支配(Dominated)

支配

 親 / 疑似親と選手が「支配と服従」の関係にあり、スポーツは、支配者である親 / 疑似親と遣える者である選手の間で取引されます。親 / 疑似親は自立できておらず、選手を遣える(仕える)者として扱うことに依存しています。

一方選手は、幼児期からの甘えたい気持ちが充足しておらず、親 / 疑似親に対して、表面的にはポジティブに取り繕うものの、実際には親たちに対して表現できない怒り、恐怖心、無力感を抱えているところが、このカテゴリの選手の特徴です。

※このウェブサイト掲載のために、カテゴリ「支配」の下位コードを一部訂正しています。

(小川,2015)

純粋培養

過干渉(Invaded)

過干渉

過干渉は、「親/疑似親が選手にとって真面目で手厚く、時に煩わしい養育態度を示している」状態です。選手は、親/疑似親の干渉を嫌がって回避すると臆病になり、別の守りを求めるか、都合よく親/疑似親の提案に依存する「回避と依存の悪循環」を続け、 結果的に自立が一向に進みません。選手にとって、スポーツは、親/疑似親による干渉を回避するための守りの一つとなります。

選手は、不測の事態に対して激しく動揺する傾向にあり、指示やルール以上の場面で、臆病で身動きが取れずに身体化させたり、守りを求めようとして問題行動を起こします。幼児期以降の課題を積み残し、家族の枠から離れて「有能感」を得られないでいることがこのカテゴリの選手の特徴です。

(小川,2015)

純粋培養

構ってもらえない子
(Emotionally Unguided)

構ってもらえない子

 構ってもらえない子は、選手が親/疑似親と「スポーツという塀によって遮られている」状態です。言い換えれば、スポーツが なければ、家族的な結びつきを維持することができません。親/疑似親は、経済的支援や、競技指導を介して選手と関わり合っているため、「スポーツそのもの」か「子供がスポーツをしている状態」 に依存し、情緒的に子供と関わるという本質的な役割を果たさないでいます。よって、問題行動や身体症状の背景に、乳児期から の親に構ってほしいという欲求が青年期になっても満たされず、底知れぬ孤独感があるところが、このカテゴリにある選手の特徴です。

(小川,2015)

純粋培養

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望ましい支援方法の提案:5年後縦断調査の結果から ―Ogawa(2021)に基づいて―

2103の調査の際の結果を考察した際、「関係性の再構築が必要だと思う」とはいいましたが、 本音を言うと、四類型の関係性が堅固すぎて...家族・家族的関係に変化(再構築)が起こるとは思えませんでした。
しかし、5年後縦断調査の結果から次のようなことがわかりました。

5年間での関係性の変化(再構築)が自立を促している

  • 大学卒業、競技引退、事故、結婚(とその相手)、就職先でのトラブルからの脱却、祖父母の動向(亡くなる、それをきっかけに集まる、など)をきっかけに、変化が起こっていました。
  • アスリートには、「反抗する」、「発言する」、「距離を取る」、「(親と)喧嘩する」、「(親に)丁寧に説明する」、「友達関係で協力する」などの行動が見られました。
  • 一方、親は適切な距離感で「支援」ができるようになっていました。(たとえば、手取り足取りというのではなく、好きな事を応援してくれる、苦しいときに見守ってくれる...など)

以上から、依存四類型、そのほか本課題の研究プロジェクトから、現段階で次のような支援の方法が提案できると思います。

カテゴリごとの自立の支援のポイントに違いはあるが、各人の得意なこと、興味のあることが話題に上がったら絶対に逃さず、すかさず、継続的に話題にしていく

  • 関心のあること(周囲が反対・足を引っ張るなどしても心理援助では応援する、絶対叶うと信じて寄り添う...)
  • 社会的仕組み、点数で見えるもので支え(過干渉)
  • どのカテゴリも、心理的に裏切られたり、無二にされていることも多い。支援に枠や制限は重要なのでそれが見放しているのでないことをしっかり説明する。(特に、構ってもらえない子)

「スポーツ」と「自己」の捉えなおしを継続することで自立(人生の前進:自律)を促す

  • 調査、関わり、カウンセリングを継続できること(頻度は少なくてもいい)

選手と心理支援者の距離の取り方に絶妙なコツが必要

  • 連絡が取れなくなる人がスポーツ選手、依存性の高い人に多い。
  • そもそも継続的な連絡(縦断調査ができたこと)が奇跡に近い
  • 連絡が取れない,反応がない人への対応(調査時は?だったが...SNSで見えるもの)
  • 調査は NG でもつながりは拒否されていない(SNS の普及も一助)

人に接することそのものも苦手(こころの?存在がない,薄い...)

  • つかみどころがない、感情がわからない(純粋培養)

計算・人格を無二にするなどの冷たい人間関係を嫌う。

  • 本当に親身になっているか、自分のことを思いやってくれるかを、とても長い時間をかけて見ている。(支配、過干渉、構ってもらえない子)